【Interview】奈良県高取町 ポニーの里ファーム 後編       ~薬から食べ物へ。奈良で当帰栽培を始めたら~

2015.06.01

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ー当帰は崖や山奥などで生えている印象でした。
 栽培されているケースもまだ少ないですし、難しくないですか?

高取町役場から栽培指導を受けながら、農園長と手探りで栽培しています。
今は約15人の農家さんが一緒に育ててくれています。
奈良県内では、他にも橿原、宇陀、五條などで栽培されていますよ。

こちらが動けば、県の行政や町の人も応援してくれます。
普段はなかなか出会えない大学の先生方にも、共同研究でサポートしていただいており、
相談できる…という状況が、何より有り難いですね。

ー薬草栽培は農作物としてはマイナーなので、専門知識が必要になりますもんね。
 どういったサイクルで育てるんですか?

種まきは11月にします。
今の発芽率は5割ですね。手探りで研究中です。

それが苗に育つ、翌年3~4月になったら畑へ植え替えます。
根だけあれば発芽できますが、逆に根が傷つくとダメになってしまうので気をつけています。
「当帰の定植は4/5まで」と言われていましたが、遅れてもなんとかなりました。笑

この定植が一番難しいですが、根が張ったらあとの手入れは虫取りと雑草抜きくらい。
毎日畑に足を運んでますが、定植すると水やりの必要がなくなるので、キアゲハや夏アブラムシなどの虫がいないかや、土の状態を見ていますね。
無農薬栽培なので、虫がいたら一匹ずつ手でとります。
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ー当帰って、土との相性が合わないと難しいですよね。
 私も庭に苗を植えてみたんですが、すぐ枯れてしまって。。

当帰には風通しが良く、日当りも良く、水はけが良くて保湿力のある土が向いているようですよ。
奈良は「田んぼが多く、畑が少ない」と言われる土質なんです。
そこで、まずは福祉作業の一環で葱を植えることで土質を改善しました。
そのお陰か、当帰もうちの畑には難なく馴染んでくれましたね。

うちは障がい者さんの就職支援の一環で農業を始めているので、
葱作りも、当帰の栽培も…彼らの役割がとても大きいです。

ー世代を超えてつながる…という話題の時にもでてきた「それぞれの役割」ですね。
 土に触れるのは一種のセラピーにもなりますし、
 生きる喜びを分かち合える素晴らしいお仕事ですね。

 ちなみに、収穫期が早ければ取り組みやすいとは思いますが、
 当帰は植えてからすぐに収穫できるタイプですか?

当帰は3年で枯れるので、根を収穫する場合は2年生か3年生の時に収穫します。

当帰の葉については6月頃の葉が柔らかい時期と、
10~11月頃の葉がしっかりした時期の2回、収穫できます。
冬には葉が落ちて枯れたようになるので、成長点だけ残して取ってしまいます。

でも、葉を取ると当帰の根の成長は弱まってしまうので、
根を収穫するための当帰と、葉を収穫するための当帰は分けて栽培しないといけません。

元々、根の部分が生薬として使われていましたが、
葉は薬事法で食品に分類されているために民間企業も個人も扱いやすい。
最近、健康食品や化粧品、入浴剤などの材料として注目されています。

ー当帰はセロリのような爽やかな香りで大好きですよ。
 天婦羅は昔から食べられていましたが、サラダやジェノバペーストのようにしても美味しいです。
 農業の一つの選択肢として当帰があるのは、すごく可能性を感じます。

近隣の農家さんにもどんどん栽培をお願いしていきたいんですよね。
去年は4万本の苗を作ることができたので、1万本は近隣の方に配布しました。

スーパーのフレッシュハーブと同じくらいの値段で販売できるように調整して、
当帰の栽培と経営が継続していけるような仕組みづくりを考えています。

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“大阪や奈良のマルシェで人気の大和当帰葉茶”

ー薬草を通じて、どういう事がしていきたいですか?

約9割の生薬が中国から輸入されているので、純国産の漢方薬って、無いんですよね。
いきなりたくさんは作れないでしょうが、地元で使う分だけでも奈良県産の漢方薬が作りたいです。

海外でも日本産の生薬の需要は増えて来ているので、中国、マレーシア、シンガポール、インドネシアなど、近い伝統医学を持つ国に輸出できるくらいのブランドに成長できる可能性があると思います。

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“シャクヤクも試験栽培中。当帰芍薬散という漢方薬を作るための一歩目”

ー日本産は、中国をはじめ海外にも高く評価されているので、大きな需要がありますよね。
 目標に向かう上で、気になることや、困っていることはありますか?

今はまだ、他の町がどう動いているのかが分からない状態です。
日本全国の同じ想いを持つ仲間に出会いたいですね。
やっぱり、薬草ってまだまだ一般の方からするとマイノリティ。
仲間がいると思えるだけで、モチベーションもあがるので。

そしてデータとしてまとまってはいなくても、薬草については経験から生まれ、伝承されるという形で残っています。
そういった先人の智慧や、当帰以外の薬草についても知らないので、学びたいです。

ー横のつながりって、なかなか見えにくいんですよね。
 私を含め、ユーザーの目線からも同じ事が学びたいので、そういった時間を企画していきましょう。

僕らも畑の近くに一軒家を借りる事もできたので、学びの場や宿泊の場として開けるよう、準備をしています。
是非また、高取にも来てくださいね。

ーはい!これからも宜しくお願いします!

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※ヤマトトウキの栽培指針はPDF化されてウェブにも上がっています。
http://www.pref.nara.jp/secure/9176/toukisisinn.pdf

>前編は、こちら。

有限会社ポニーの里ファーム http://www.takatori-yakuzen.jp/
奈良県高市郡高取町丹生谷883-6(商品開発室)

Photo by 中島 久美子(写真家)
https://www.facebook.com/recollections.photographer.kumiko
Written by 新田 理恵(tabel)

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【補足】
Q1 当帰(とうき)って何?
セリ科シシウド属の植物で、セロリのような芳香があります。
根っこが特に薬効が強く薬品に指定されており、漢方薬の材料になっています。
身体を中からあたため、血液を作るので、冷え性や肩こりをはじめ女性のトラブル全般に最適です。

Q2 ふつうの当帰と大和当帰の違いは?
ヨーロッパトウキやアメリカトウキもあり、実は色んな国に自生しています。
日本にはミシマトウキやホッカイトウキがあり、奈良にはヤマトトウキがあります。
茎に赤い筋が入っているのが、大和当帰の特徴です。
他の種類のトウキよりも、ヤマトトウキは有効成分が多く含まれているという研究結果も出ています。
ヤマトトウキ

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